2023年度 筑波大学附属駒場中学校の入試分析

本日は、自由が丘校・白金高輪校が担当した筑波大学附属駒場中学校の分析を掲載します。

算数

今年度は、整数の問題、場合の数、平面図形、速さ、の4題構成だった。
各分野からバランスよく出題される傾向は変わっていない。

大問4では、家から駅に向かう際に、どの横断歩道を渡れば一番早く行けるかを問う問題が出題された。横断歩道にある信号が青、点滅、赤に切り替わる規則を考えながら解かなければならない。
(1)は規則に基づいて素直に計算するだけで良いが、(2)や(3)では、到着時刻から逆算して渡る横断歩道を考えなければならない。
複雑な条件に対して最適な処理方法を瞬時に判断する判断力と、的確に処理する処理能力が問われた。
算数は実生活の事柄から考えるのが基本である。

大問4のような、実生活に基づいた出題は今後も続いていくと思われる。実生活での出来事を算数的にとらえる練習をしておくと良い。
また、40分という短い試験時間の中でできるだけ効率よく解き進めていかなければならない。
エルカミノでは、ひとつの問題に対してさまざまな考え方を教えている。
日頃から「もっといい解き方はないか」といった向上心を持って学んでいくことが重要である。

 

国語

例年通り、小問に記述で説明を求める問題であった。

大問2
出典は、岸田奈美の随筆文「ガラスのこころ」である。
ダウン症の弟が「ガラスを割った」エピソードが紹介されている。
中学生のときマンションのガラス扉を割った罪をわるがきになすりつけられてしまった。
疑いは晴れたものの、弟は感情を人に伝える言葉を持たないせいで疑われた怒りや悔しさから、筆者はその無念を思い二人でわんわん泣いた、とある。
二度目は、物忘れがひどくなった祖母に勘違いで責められ、悲しみや怒りを発散するために扉を強く閉め扉のガラスを割ってしまう。
心優しい弟からすれば生き物を殺したも同然で、ひどく落ち込んでしまう。
命あるものもないものも「ヒヨコ」のように大切に扱う弟だからこそ、象徴的な出来事として語られている。
特に問4は「とがって散らばった破片は、声にならない声のようだった」という比喩的表現から、自分を信じない祖母への激しい悲しみや怒り、ガラスを割ってしまった苦しみや後悔を解釈し、自らの言葉で記述することが難しかった。
筑駒が国語で求める「豊かな言葉で自分の世界を作ってほしい」というメッセージが反映されたような問題となっていた。

 

理科

大問6題の構成。
[1]植物 [2]天体 [3]電気回路 [4]力学 [5]溶解度 [6]金属の性質
例年の7題構成から減ったが、小問数としての分量や全体的な難易度は例年とほとんど変わらなかった。

[4]はてこのつり合いに関する問題。「分銅を用意して○グラム刻みではかる」といった出題は、2011年、2017年にも出題されており、過去問演習をしっかり行っていた受験者はスムーズに設定を読み取れただろう。

[4]力学だけでなく、[5]溶解度にも重めの計算が求められたため、例年以上に算数の力の差が点数の差に現れたと思われる。
計算問題に時間を使うので、[2]や[6]のような問題は時間をかけずに答えたい。
そのためにも、基本的な知識は小5のうちから正確に身につけ、併せて計算問題に対応するための算数の力も付けていきたい。

 

社会

大問3題の構成は例年通り。

大問1は「ダークツーリズム」を通して、悲劇の現場に実際に訪れて学びを深めて欲しい。
大問2は「図書館」という公共場を通して民主主義について考えて欲しい。
大問3は「地球温暖化」について改めて考えて欲しい。
それぞれの大問のテーマは筑駒の社会科の先生からのメッセージで、入試問題にとどまらない内容だった。

特徴的だったのは大問3で、初見の3つの図を考察させる問題だ。
2つは折れ線グラフだが、1つは面積比を示すグラフだった。
そして横軸はそれぞれ年数なのだが、1目盛りの年数が異なる読みとりにくいものだった。
図表を読解する練習をしてきた受験生にとっては、記号選択問題での設問でもあるので難度は高くないが、いかに短時間で処理するかが合否を分けたと思われる。
なお全体的な問題の難易度レベルは易しく高得点勝負になった。