2023年度 桜蔭中学校の入試分析

続いては、本郷三丁目校が担当した桜蔭中学校の分析です。

算数

小問集合1題と設問付き大問3題の構成に変わりはないが、小問集合が半ページから1ページに増えたため、問題用紙が今までの2枚から2枚半へ1枚増量となった。
例年の特徴である計算処理の煩雑さに加えて、今年は問題用紙増量に伴う問題の長文化のため読解処理能力も求められた。
50分の制限時間では足りないと感じた受験生が多かったと思われる。

大問I:小問集合(計算・比例反比例・集合算)
(3)集合算はベン図でも考えられるが、算数オリンピックの問題を考えるときに使う3つの表を使うときれいに整理できる。

大問II:速さと植木算
(4)は2人が木を植える状況を丁寧に処理をしても良いが、(1)~(3)でわかったことを使って答えを予測することができないと試験時間に正答することは難しかったであろう。

大問III:条件整理と場合の数
問題が長文のためゲームのルールを理解することに時間がかかるが、ルールがわかりさえすれば条件に当てはまる状況を場合分けして整理していけば答えを求めることができる。

大問Ⅳ:速さと立体図形
大問Ⅱ同様に、(4)は(1)~(3)でわかったことを使って立体をくりぬかれた図を予想することが求められた。

   画像1
画像2

時間がかかるうえに正解しにくい問題もあるが、問題の誘導に従えば考えやすい問題も並んでいたため、時間配分が1つのポイントとなった。
全体的な傾向は例年と大きくは変わっていないため、過去問等で準備をしてきた受験生は実力を発揮できたと思われる。

 

国語

大問 I  随筆文(高橋源一郎『高橋源一郎の飛ぶ教室-はじまりのことば』)
大問 II  物語文(岩瀬成子『ひみつの犬』)

解答用紙の体裁には変更はないものの、問題用紙を見て驚いた受験生もいるのではないか。
長年続いたフォントが丸みを帯びたものに変更になり、かなり読みやすい印象になった。
見た目だけでなく内容も、例年の大人向け・男性向けの文章ではなく、随筆文は時事ネタが盛り込まれた若者向け、物語文は同世代の女の子が主人公で、どちらも共感を持って読むことができただろう。
記述は字数は例年通りだが、本文中の言葉をそのまま使って書けるような問いもあり、高得点の争いになる。
凡ミスの有無が合否を分けたと分析する。

 

理科

大問I:水溶液の性質 大問II:昆虫(セミ) 大問III:天体 大問Ⅳ:物体の運動

昨年からの大きな変化として、問題用紙が今までの3枚半から4枚半へ、1枚増量となった。
読解に要する時間が増えるため、基本的な知識問題は即座に解答する必要がある。

大問IIで扱う関東・関西のインターネット接続率とセミの分布の関係や大問IVのゴムひもの本数・長さと台車の速さ・走行距離の関係は、普段の学習ではあまり見ない表なので、分析に時間がかかったであろう。
定番問題である大問I・IIIをどのくらい手早く処理できたかが合否の分かれ目であった。

 

社会

大問1:地理 大問2:歴史 大問3:公民 

形式などは昨年を踏襲しているので、受験生にとっては取り組み易かったと思われる。
出題難度も大きく変わっていない。
一見難度が高そう見えて、今までの学習で対応できる例として大問2の問9を挙げる。
この問題は、海面漁業就業者数・海面漁業漁獲量・海面養殖漁獲量・産出額の多い魚介類から、神奈川県・佐賀県・長崎県・北海道を選択させるものである。
これは、それぞれの県の漁業に関するイメージを利用することで正解を導き出すことが可能で、「海そう類」から有明海の海苔の養殖で有名な佐賀県、「マグロ類」から遠洋漁業で有名な三崎港がある神奈川県が決定する。
残すのは長崎県であるが、表中の「貝類」からホタテ貝などの養殖で有名な北海道と決めることができれば、残りの長崎県と決定できる。
このように各県の漁業に関するイメージを学習によって持つことができれば、正答は容易である。
エルカミノで与えられた教材を、しっかり身につけ、短時間で判断・選択できる力をつけることができた受験生には十分対応できたと思われる。