2019年度 桜蔭中・女子学院中の入試問題分析

みなさん、こんにちは。
今回は桜蔭中、女子学院中の入試問題分析を掲載いたします。
桜蔭中の分析は自由が丘校責任者の大渕が、女子学院中の分析は豊洲校責任者の木野が担当しました。

<桜蔭中学校>

算数

 やさしい問題と難しい問題がバランスよく配置されている。大問Ⅱ(1)は平面図形に規則性を絡めたもので、桜蔭中の定番。大問Ⅱ(2)は図形の移動で、これも最近よく出題される。

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 大問Ⅲの食塩水の問題は、面積図や天秤図を使わなくても解ける。テクニックよりも論理的に考える力が必要である。

 大問Ⅳは時計算で、普通の時計とは異なる時計を考える。(3)は解けなくても、算数が得意なら(2)までは正解して、全体で7割は得点したい。時計算だが答えが整数になる美しい問題。

国語

 大問一が論説文で約1,500文字、大問二が物語文で約9,000文字と例年どおりの二題構成。

 大問二の『神に守られた島』は2018年7月発売の新刊で、武蔵中でも出題されたことは既報どおり。しかし武蔵中の文章は伍長さんが幸せに島で暮らし続けるのではないかと思わせるところで終わっているが、桜蔭中では本土に帰るための別れのシーンまで描かれている。校風の差だろう。

 設問形式については、昨年から引き続き、200文字の記述がなくなっている。さらに、ここ数年「気持ち」だけを問う設問がなかったのだが、今年は2問出題された。受験生にとっては解きやすく、国語での点差がつきにくくなった。

理科

 大問Ⅰは、砂糖が水にとけるときのようすを知っている必要がある。アイスコーヒーなどにガムシロップを入れて飲んだことがあれば、問題文中の「モヤモヤ」がうすまりつつある砂糖だとわかる。

 大問Ⅱは電熱線による水の加熱という定番問題であり、電圧・電流・電力を理解していれば難しくはない(下図)。ただし、例年どおり計算に時間がかかるようにつくられているため、落ち着いて取り組む必要がある。

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 大問Ⅲは人体の血液循環機能の模式図、大問Ⅳは天体に関する問題。どちらも中学受験では頻出の内容なので素早く解き、大問Ⅱに時間をかけたい。

社会

 大問Ⅰは交通と物流の発達をテーマに、地理分野と歴史分野を総合的に問う問題。短文での記述が3問あるが、それ以外は選択肢問題、語句問題になっている。

 記述問題の問10「江戸時代の関所の役割」、問13「江戸時代、冬から春にかけて火災の延焼、類焼が発生しやすい理由」は授業や宿題で演習している内容なので、すぐに書けただろう。問14「宿場周辺の農村の人々が20万人も参加する大きな一揆が発生した理由」は、本文【b】の内容を踏まえて、どのような負担に対する不満だったのかをまとめる。

 大問Ⅱは公民分野が10問。標準的な内容で問題数も少ない。

<女子学院中学校>

算数

 昨年度と同じくやややさしい構成となった。1枚目の計算は複雑そうに見えるが、673を3倍すると2019になることを意識すれば間違えない。

 2枚目の円の移動、展開図の問題(下図)は確実に正解したい。1~2枚目を9割以上正解し、最後の3枚目で3問中1問正解すれば合格ラインに届く。2問解ければ大きなアドバンテージとなる。

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 大問[4]の時計算がおもしろい。与えられた時間に(6-0.5=)5.5度をかけた値が、求める角度と180度との和になる。気づけばすぐに解けるが正解率は意外に高くないだろう。

国語

 大問一の説明文は、2018年に刊行された『樹木たちの知られざる生活』からの出典。女子学院が好む「自然を称賛し共存していく」というテーマで書かれている。問8「筆者はどのような人間社会を価値があると考えているか」という問いには、筆者が林業を始めて間もないころの体験を基に、周囲から援助されている弱いメンバーが社会に参加する大切さに気付いたことを使って文章にする。

 大問二の随筆文は、2017年に東京新聞で発表されたエッセイ。作者は、医師であり小説家の夏川草介さんで、映画『神様のカルテ』の原作者としても知られる。医師として治療を優先したい気持ちはあるものの、医師の経験を積んだことで、「生きるということは何事かを営むことと同義である」と気づいたことを踏まえて設問に答える。

理科

 大問Ⅰは環境問題を意識した、資源や気体の循環の問題。大問Ⅱは、天気の変化が空気の温度変化で起こるしくみを文章から読み取り、持っている理科知識とあわせて考える。ほとんどが標準的な内容で、難しい問題は空欄補充の形式になっているため取り組みやすい。

 大問Ⅲは、淡水のメダカと海産のメナダについての問題。メダカの生態は全て知識問題。メナダに関してはグラフを読んで解くようになっている。1つの問いに対して、示されている3つのグラフを全て適切に利用しないと正しい解答にたどり着かない。この学校はグラフの読み取りが頻出ではあるが、今年は特に練られた良問であった。

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 大問Ⅳは、竿ばかりを題材にした天秤問題。難問はなく、標準レベルの内容になっている。

社会

 大問Ⅰと大問Ⅱは歴史分野。細かい知識を問う問題がなくなり、短い記述が増えた。大問Ⅱ問6「1950年代の三種の神器のうち、白黒テレビ以外の2つが人々に余暇を楽しむ余裕を与えた理由」を問う問題は、残りの三種の神器が洗濯機と冷蔵庫であることを踏まえ、家事にかかる時間が短縮したことを答える。どちらの大問も比較的やさしい問題が並んでいた。

 大問Ⅲの地理分野がやや難しい。特に、複数選択の選択肢問題に時間を取られた受験生が多かっただろう。

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以上、桜蔭中と女子学院中の分析でした。
明日も引き続き入試分析の記事を掲載します。